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2020年3月 4日 (水)

にわかファン

かりそめの姿で喜びを分かち合う
 19年度の流行語大賞はラグビーワールドカップから選ばれるに違いないと思われた。「笑わない男」とか「ジャッカル」とか。結果選ばれたのは「ワンティーム」。しかし、私が好きなのは、「にわかファン」。
 「にわか」とは「急に・突然」の意味で、にわかに降ってきた雨のことをにわか雨という。あくまでも一時的であり、本来的ではなく、かりそめのものという意味で、偽物っぼい、インチキくさいの意味になる。
 このラグビー大会は、始まるまで、ちっとも盛り上がっていなかった。日本は体格的に海外ティームにかないっこないと信じていた。
 泥臭い。男くさい。汗臭い。美しくない。そうした、ラグビーの一般的なイメージも不利に働いているのではと思われた。
 しかし、始まってみると、ロシアを相手に勝ってしまった。強いのだ。強豪アイルランドを、鮮やかなパスとスピードで圧倒した。スコットランドはその勢いで倒すことができた。
 ラグビーは武骨でありながら華がある。ユニフォームの胸の桜のマークがアンバランスでいい。日本中が沸(わ)いた。当然のように、熱中する人が増える。「にわかファン」と呼ばれた。
堂々と「にわか」を自認する
「にわか」には、真っ当でなく胡散(うさん)臭いの意味があって、「にわかファン」は、昔からのラグビー好きからすれば、蔑称(べっしょう)である。
 事実、ラグビーについて急に語り始めたオジサンたちの中には、「神戸神鋼のゲームを見た」とか、「新日鉄釜石の大八木がいかにすごかったか」を話し、知っているんだぞ、にわかじゃないんだぞと言いたがる人がいた。しかし、今までラグビーについて一切語ることをしなかったのだから、実は「にわかファン」だった。「にわか」であることを恥じていた。
 その後、自称として堂々とにわかファンであることを自認する人々が現れた。ここが、この言葉のすてきなところなのだ。
 自分は、ラグビーについて知らない。そのルールもよくわからない。近頃の選手としては、五郎丸(ごろうまる)君しか知らない。「ジャッカル」なんて初めて聞いた。でもこの度の試合をテレビで見て、面白いと思ってしまった。
 にわかであることを認めてしまうというのは、何より正直である。その日本ティームの活躍を見て、とても嬉(うれ)しくなってしまった。幸せな気分になっている。恥ずかしがりながらも、その喜びを人に伝えたくてたまらない。その謙虚さはいじらしい。
 わたしも無論、生粋のにわかファンだ。

サライ2020年2月号、金田一秀穂による連載「巷(ちまた)の日本語」、第37回「にわかファン」

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私もにわかファンです、でした。

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