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2020年1月16日 (木)

同調圧力

 私は安保闘争を体験した人間です。主義主張もなく、言われるがままデモに参加した私たちは、「坊ちゃん左翼」と周囲から、からかわれたものです。
 同級生の中には、自らの意志で安保に参加しなかった人間がいます。彼らはしかし「裏切り者」と呼ばれ、いまだに同窓会名簿から除名されたままです。
 ナチスのユダヤ人虐殺には、多くのドイツ人が積極的に関わったことが知られています。集団心理が働き、人々を駆り立てたのでしょう。安保山闘争も同じです。集団的圧力が同調を強(し)い、多くの学生はその空気に流されたのです。冷静さを失ってしまった。
 では、フランクル(『夜と霧』の著者)やレーヴィ(『これが人間か』の著者)は、なぜ極限にあって、冷静でいられたのでしょうか。 フランクルはフロイトなどに師事した精神科医です。レーヴィもまた、大学の理工学部で学んだ化学者です。彼らにはよって立つ科学があった。科学は時として、お金にならなくても研究をしなければならない。世間に流されずに自分の信念を貫いた先に、真の研究がある。彼らの強さはここにあります。
 今の日本は、戦前や安保の時と同じく、同調圧力が強まっています。フランクルやレーヴィのような冷静さこそ必要とされていると、私は思っています。

サライ2019年2月号、サライBOOKレビュー、藤田紘一郎(医学博士・80歳)人生を変えたこの一冊、から。

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