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2020年1月18日 (土)

Onepieceの組織論

 もちろん生身の身体に担保されないイデオロギーでも、人間たちを殺し、都市を焼き、文明を破壊することはできます。むしろ、イデオロギーだからこそできる。でも、作り上げることはできない。蕩尽することはできるけれど、創造することはできない。この世界で「創造」ということができるのは人間の身体だけだからです。一日八時間寝て、三度の飯を食って、ときどき風呂に入ったり、昼寝したり、宴会をしたりしていないと生きた心地がしない、そういう手のかかる、壊れやすい身体だけがこの世界に価値あるものを創り出すことができるからです。
 テロリストたちはつねに堂々たる大義名分を語ります。そして、それが完遂されるために「多少の非戦闘員が『そばづえ』を食うくらいの損害はやむを得ない」とうそぶきます。そこには生身の身体が感じる痛みに対する共感がありません。傷の痛みや、飢えや渇きや、家郷を失うことの絶望感をリアルに感知する器官がテロリストには備わっていません。
生身の身体の「傷つきやすさ」に怯えや気後れを感じないものが「テロリスト」である。僕はそう思います。彼らに与してはならない。
 ルフィーは「傷つかないもの」と「傷つくもの」の間の対立においてはつねに「傷つくもの」の側に与してきました。それは「生きるもの」の側に与するということとほとんど同義なのです。この風通しのよい真理を語るものが現代社会にはあまりに少なくなってきたがゆえに、人々は『Onepiece』を熱く支持し続けているのだと思います。

内田樹の研究室、のブログ 2020-01-11 samedi「Onepieceの組織論」から。全文はこちら

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