Win-Win は有り得ない
「大岡裁き」に「三方一両損」という話がありますけれど、あれが合意形成です。二人が対立しているとして、そこに第三者が出てきて、二人に譲歩を求める調停案を提示する。そのときに、その調停者も同じだけの損害を引き受けなければいけない。「損をかぶる必要がない人が損をかぶる」ことで初めて対立しているものたちが「いったい自分たちは何のために、これほど争っているのか……」と我に返るからです。Win-Winという言葉は、誰が作ったのかはわからないけれど、そんなことはありえないんです。話がまとまるのは、“Lose-Lose-Lose”なんです。三者が必要なんです。合意形成のための条件は二つあって、一つは「三人がみんな同じように不満足な解」であること。もう一つは「調停者は、損をする必要がないのに、当事者たちと同じくらいの損をかぶること」です。だから、よくできた合意形成というのは、全員の舌打ちとともに終わるわけです。
朝日新聞 &M 2019.07.12 共感にあらがえ<08>共感での連帯は危険!わかり合えなくても協働できる人間関係の考え方(内田樹×永井陽右)、から内田樹の発言。
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世界には今、損をかぶる調停者がいなくなり、グチャグチャになっているのでは?
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