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2019年10月 1日 (火)

真逆

意味は同じようで、実は微妙に異なる言葉

真逆(まぎゃく)――。この言葉は2002年~2003年ぐらいから使われるようになって、2004年の流行語大賞のノミネート語にも選ばれた。流行語大賞は、すぐに消えてしまうような言葉が選ばれやすいのだが、例外的に、一般に息長く使われる言葉になっている。
 意味を調べると、「正反対」とある。確かに「真」というのは、「真正直」とか「真四角」などで判(わか)るように、真正(しんせい)の、本当の、非の打ちどころのない、という意味の接頭辞であり、そのように逆である、という意味なのだろう。
 しかし、言葉の経済学というのがある。ある言葉と同じものが出てきたら、古い言葉が消える。おなじ言葉が併用されることはない。二つあるのは勿体(もつたい)ないのだ。覚えている言葉、使う言葉はなるべく少ないはうが経済的である。もし、「真逆」が「正反対」と同じ意味であるのならば、「正反対」は使われなくなるはずなのだ。
 しかし、「正反対」も使われているし、「真逆」も使われている。
 使う人が違うということも考えられるが、「真逆」を使う世代は、「正反対」もふつうに使っている。「真逆」と「正反対」は何が違うのだろう。
 「真逆」の実際の使用例を見てみる。ある映画の紹介文である。
 <この映画は、家族全員が失業者である家族と、IT企業CEOの家族という、生活状況が真逆の家族の関わり合いを描いたストーリーで…云々(うんぬん)>
 この文の中の「真逆」を「正反対」に入れ替えてみると、なんだか変だ。生活状況が「正反対」の家族、というのはわかりにくい。具体的なイメージが浮かびにくい。
 もうひとつ。
 <中間層が減少し、貧困世帯が急増する中、消費税を上げるのはおかしくないですか? 真逆の政策ではないですか?…云々>
 真逆は正反対と言うはど反対方向ではないように思われる。正反対という時、意見は正対称を描いて反対方向を向いている。180度違う。真逆と言う時は、同じ方向ではないのだが、90度ぐらい違っているくらいでも言えてしまう。異なるだけでなく間違っている、という意味さえ生まれてきそうだ。
 性格が「正反対」の夫婦は、どうやってもうまくいかない。性格が「真逆」の夫婦は、案外うまくいってしまうかもしれない。
 「正反対」は反発しあってしまう。完全な対称を描く。理数的な関係である。「真逆」はすれ違う。人文学的なあいまいさがある。正反対は引っ張り合って引きちぎれてしまう。真逆は補完しあって、妥当な方向に進むことができる。
 新しい言葉が生まれた時、必ずそこには今まで表現できていなかった新しい意味が加わる。

サライ2019年9月号、金田一秀穂による連載「巷(ちまた)の日本語」、第32回。

成る程! 真逆というのは新しい言葉だったのですね。

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