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2019年8月28日 (水)

表記上のすぐれた発明

 栃木・鬼怒川温泉に立つ野外看板です。〈あ゛~〉と大きな字で書いてあります。お風呂でくつろいだときに出る「あー」という声。これを濁点によって表しています。
 「あ」は母音なので、本来、濁点はつけられません。というか、つけても発音しようがないはずです。
 ただ、「あ」にもいろいろな音色があります。普通の「あ」は声帯を閉じて、ぶるぶる震わせて発音します。一方、お風呂でリラックスしたときの 「あ」は、声帯を少し緩ませて発音します。これが「あ゛」です。
 あるいは、いわゆるダミ声を「あ゛」で表す場合もあります。驚いたり困ったりしたとき、思わず声帯を緊張させて発音するのが「あ゛」です。同様に「え゛っ」もダミ声の発音と考えられます。
 「あ゛」や「え゛」は1980年代頃から漫画などに登場しました。「ぬ゛っ」(これもダミ声)も当時からありました。今では、小説など一般の文章でも見かけます。
 日本語に新しい音(おん)が誕生したように見えます。でも、実際は、昔からあったダミ声などの音を、濁点によって明示したのです。「あ゛」は、表記上のすぐれた発明でした。

2019年8月24日 朝日新聞 be on Saturday
(街のB級言葉図鑑)あ゛~ 飯間浩明(国語辞典編纂者)

 

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