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2019年7月15日 (月)

○活

何事にも努力を怠らないのはいいのだが…
就活(しゆうかつ)という言葉が言われ出したのは2003年ごろらしい。好景気が終わって、就職するのが難しくなった。就職氷河期になって、就職活動が恐ろしく厳しくなった。20社受けて断られたとかいう悲惨な話を聞かされたりした。この時代の若者はとても気の毒だった。いつか、就職活動が短縮されて、就活と言うようになった。/受験用の面接マニュアルがベストセラーになって、敬語の勉強が盛んに行なわれた。だから、この世代は団塊の世代などと違って、敬語について正しい知識を身につけた者が多い。ただし、言葉で飾ることが上手だともいえる。/就活にならって、何かをしようと準備することを、○活と言うようになって、いろいろな言葉が派生した。/結婚したいという人は婚活(こんかつ)をする。合コンしたり、いろいろと出会いを求めるのはいいけれど、縁結びのパワースポットに出掛けたりすることも婚活に含まれるらしい。/妊活(にんかつ)と言うのは、赤ちゃんを授かるために、いろいろと努めることらしい。筆者は具体的に何をするのかわからないが、神社にお参りするだけでは効果がないのではないかということぐらいはわかる。/婚活も妊活も、縮約語を作るのに、結婚の婚のはう、妊娠の妊のほうを採る。結活や娠活では、元の言葉がわかりにくいからなのだろう。言葉の研究者としては、縮約語の作られ方が面白い。/そうして、今度は朝活(あさかつ)というのが現れた。朝を実現するために何をするのだろうかと戸惑ったのだが、朝からいろいろ活動することであるという。ラジオ体操だけではなくて、朝から資格のための勉強をしたり、朝から仕事を片付ける、朝から家族ときちんと食事を摂る、というようなことをするらしい。えらいことだ。勤勉さに頭が下がる思いだ。朝はただただ、休んでいたらダメなのだろうか。/そこへもってきて、終活(しゅうかつ)。死ぬための活動をすることであるという。死ぬことは誰でも出来ることで、いやでも勝手に死ぬことになるのだから、そのための活動はしなくてもいいだろうと思うのだが、そうもいかないらしい。残された遺族が困らないように、あるいは行き倒れした時に誰かに迷惑をかけないように、葬儀の時の遺影用の写真とか、骨壷の用意とか、当てにならない唯一の身寄りの連絡先とかがわかるようにしておくことらしい。/今の日本は死ぬことさえ世間を気にしなければいけない。と言うか、生きている時にさんざん迷惑をかけたのだから、死ぬ時ぐらいは他人様に迷惑をかけないようにしなければいけない、ということなのだろう。おちおち死んでいられない。

金田一秀穂「巷の日本語」―サライ2019年7月号―より

私はといえば、終活中です。

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