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2019年3月 3日 (日)

縮約の法則から外れた〝むずい″新日本語

巷(ちまた)の日本語 第24回「気もい形容詞」 by 金田一秀穂

日本語の形容詞が、崩れ始めている。
形容詞とは、語尾が「イ」で終わり、名詞を修飾することを本務とすることばである。
「痛い」「熱い」などの短い形容詞が、「痛っ」「熱っ」と叫ぶのは以前からある。
「アウチ」とか「アイヤー」とか叫ぶ英語人、中国語人に比べて、危機的な状況を瞬時に分析的に判断し、表現する日本語人は、とても理知的なのではなかろうか。これが若者たちの間では、「高っ」「広っ」というふうに、「とても高い」「広くて驚いた」という時に使われるようになっていることも、以前、本連載で書いた。
形容詞の語尾「おい」「あい」が「えー」に変化するのは、以前からあった。「すごい」は「すげー」になり、「うまい」は「うめー」になる。「うい」は「いー」になって、「悪い」は「わりー」、「明るい」は「あかりー」になる。
どちらかというと乱暴な男言葉だと思われていたが、最近の若い女性は平然と、「マジやべー」などと言う。
「かっこいい」は「かっけー」になって、「おいい」が「えー」になってしまっている。この変化があるので、「本田△」 が、とても上手で酒落(しやれ)た表記ということになる。「本田△」がわからない読者諸氏は、この言語変化についていけてない(※)。
さらに、語尾が省略されて短くなる現象がある。「~かしい」という形容詞は、「かし」が消えるのだ。「難しい」は「むずい」になる。「恥ずかしい」は「はずい」と言う。
ただし、「愚かしい」が「おろい」にならず、「小賢(こざか)しい」が「こざい」にならないのは、「愚かしい」とか「小賢しい」の語彙(ごい)が若者には使われないからだろう。そのうちに「古めかしい」が「ふるめい」になり、「奥ゆかしい」は「おくゆい」になってしまうかもしれない。すると、新日本語はかなり「むずい」ことになる。
さらに、「きしょい」は「気色悪い」の縮約形であり、「きもい」というのは「気持ち悪い」を短くした形である。「悪い」が消えてしまう。否定的な意味を表す部分は決定的であって、意味が全く分からなくなってしまうだろうと思うのだが、言葉の変化には理由がない。
「きしょい」が「気色いい」の短い形でないのは、「気色いい」があまり一般的な語彙ではないからかもしれないが、「きもい」なのだから「気持ちいい」を短くしたのでもいいだろうと思う。
しかし「きもい」はなぜか「気持ち悪い」であるという。「気持ちがよかった」は「気持ちかった」であるらしい。

 

サライ 2019年1月号

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